本日(2010年2月1日)、会長・社長就任にともなう記者会見を実施いたしました。
日本航空 会長
稲盛 和夫
ただ今、ご紹介いただきました稲盛でございます。
このたび日本航空の会長に就任をいたしました。本日は、会長就任に際しての、私の思いをお話しさせていただきたいと思います。
皆様すでにご存知のように、日本航空は、1月19日、会社更生法の適用を申請し、企業再生支援機構の支援のもと、再生への道のりを歩み始めております。
このような法的整理の道を選んだため、これまで築き上げてきました日本航空のブランドイメージが大幅に低下するのではないか、また社員のモラルが低下し、航空機の運航にも支障が生じるのではないかと危惧する声も多々ございました。
しかし、お蔭様で、JALグループの運航には何の混乱もなく、従来通り、多くのお客様にご搭乗いただいております。これも、JALグループの全社員が、このような厳しい状況の中でも、お客様を大切に思う心を忘れず、またJALグループで働いているという誇りを失わず、懸命に努力をした結果だと思っております。しかし、それにもまして、多くの国民の皆様や旅行会社などの関係者の皆様から、「日本航空頑張れ」と、温かい励ましとご支援をいただいた賜物と、心から感謝を申し上げる次第でございます。
本当にありがとうございました。
私は本日、日本航空の会長に就任いたしましたが、航空業界につきましては全くの素人であり、JALグループの事業内容や経営状況につきましても、よく判っておりません。先週から1週間かけて、一生懸命に勉強をさせていただいているところでございますが、ようやくおぼろげながら全体像がわかりかけてきた状態でございます。
しかし、企業再生支援機構と日本航空の方々が一緒になって作成された事業再生計画につきまして説明を受けておりますが、また、私なりに分析もさせていただき、私は長く経営に携わった者として、この再生計画を確実に実行に移して行きさえすれば、再建は十分に可能だと思っております。
本日から、大西新社長をはじめ新しい経営陣、さらにはJALグループの全社員の方々と一緒になって、この再生計画を着実に、またできるだけ早く達成し、日本航空を早急に再生させたいと考えております。そうしなければならないと改めて決意をしている次第でおります。
なぜなら、日本航空は日本を代表する企業のひとつであり、その日本航空の浮沈は、日本経済にも少なからず影響を与えると思うからでございます。その意味では、日本航空が素晴らしい企業として蘇ることは、低迷する日本経済の活性化にも、大きく貢献するはずであります。
また、色々と勉強をさせていただく中で、航空事業は、もともと、遠くに離れた人と人、また人と地域とを結びつける大きなネットワークビジネスであり、極めて重要な社会的インフラであることがよくわかりました。その重要なインフラを担う日本航空を早急に再生させることは、グローバル化がさらに進展する現代社会においてもっとも重要となるだけでなく、日本が観光立国としてさらに発展していくためにも、必要不可欠なことであると考えているからでございます。
もちろん、航空会社の基本は安全運航であります。いままでも、日本航空は安全運航には万全を期してまいっておりますが、今後、再建を進める中でも、さらなる安全運航に努め、お客様に信頼され、安心していただける航空会社としてまいりたいと考えております。
古来、企業の盛衰は、まさにリーダーの資質にかかっていると言われております。その意味では、私の責任は重大であると自覚をいたしております。航空事業には素人ではございますが、これまでの私の企業経営者としての経験から得た経営思想や経営管理システム、さらには私の人生から得ました人間としてあるべき姿や持つべき考え方を、JALグループの社員の一人一人に伝え、全員が同じような思いを持ち、一丸となって、日本航空の再建に取り組めるようにしていきたいと考えております。そのような体制をつくりあげることができるかどうか、再建の成否はそこにかかっていると私は思っております。
なぜなら、その企業に集う社員一人一人が、心から会社を愛し、この会社の発展のために協力を惜しまない、というような社風をつくりあげることが経営を成功させる必須条件であり、そのような社風を作り上げることができれば、必ず会社は発展していくものであると思うからであります。
つまり、企業のもっとも大切な財産とは、そこに集う社員であり、さらに言えばその社員の心だと思うからです。社員の方々が心から再建を望み、心から協力するならば、その企業は発展し続けることができると私は固く信じております。
そのように考えておりますだけに、今後はできるだけ現場をまわって、一人一人の社員とも対面し、膝を接し、彼らが何を思い、何を感じ、何を考えているかを直接に聞き、また私の思いもお伝えし、彼らがさらにJALグループで働きたい、再建に協力したいと思うような、企業風土を築いていきたいと考えております。
そして、経営幹部と現場の一人一人の社員がベクトルをあわせ、お客様に対し、これまで以上に心温まるやさしいサービスと明るい接客につとめ、お客様から真に信頼され、愛されるような日本航空に蘇らせていきたいと願っております。
日本には、私ども日本航空とともに、日本を代表する航空会社として、全日空さんが存在いたしております。私ども日本航空だけの再生、繁栄をめざすのではなく、両航空会社が、切磋琢磨しながら、日本国内、また日本と世界を結ぶ交通インフラの担い手として、日本経済、いや世界経済の発展に、共に貢献してまいりたいと考えております。
私自身、もうだいぶ歳ではございますが、身を粉にして、できる限りのことをさせていただくよう、決意いたしております。何卒、関係各位の皆様、また国民の皆様の絶大なるご支援を、心からお願い申し上げ、私の日本航空の会長就任の挨拶にさせていただきます。
ありがとうございました。
日本航空 社長
大西 賢
本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございました。
このたび、株式会社日本航空社長、株式会社日本航空インターナショナル社長に就任いたしました、大西 賢でございます。
私は、昭和53年、当時の日本航空株式会社に入社し、技術畑を中心に歩んでまいりました。
2009年4月から株式会社日本航空インターナショナル執行役員、同年2009年6月より日本エアコミューター株式会社の社長を務めさせて頂いておりました。今後は、稲盛会長とともに、日本航空の早期再生を果たし、お客さまから愛され、ご利用頂けるJALを目指して、邁進してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
支援決定に関して、また会社更正法申し立てに関しては、みなさまご承知のとおり、去る1月19日、株式会社日本航空・株式会社日本航空インターナショナル・株式会社ジャルキャピタルは、東京地方裁判所に対し会社更生法の申し立てを行い、即日 同手続きの開始決定を受けるとともに、企業再生支援機構からの支援決定を受けました。
株主様、お取引金融機関を始めとする債権者の皆さま、そして国民の皆さまには多大なご迷惑とご心配をおかけすることになり、心よりお詫び申し上げます。まことに申し訳ありませんでした。
弊社は半官半民の会社としてスタートし、その後、民営化したものの、未だにいわゆる「親方日の丸」の体質を引きずっている側面もございます。私は過去を謙虚に反省し、高コスト体質、しがらみ等の負の遺産を徹底的に断ち切り、根っこから生まれ変わります。すなわち、過去と決別し、皆さまから与えていただいた再生のための最後のチャンスを社員全力でやりぬきます。
今後は、会長のご指導をいただきながら、社内の意識改革を進めるとともに、更生計画の策定に全力を挙げ、早期認可を目指すべく頑張ってまいります。
今後の大きな会社の方向性についてでございますが、3つの経営施策を実行に移します。
1つめは、航空機材の大幅な刷新の実現、2つ目は、筋肉質且つ柔軟な事業運営体制の実現、3つ目は、戦略実現のためリソースの集中投下、これを行ってまいります。
これらの実現により、世界的にもトップレベルの、強靭な体質をもった新たなJALに生まれ変わります。
いうまでもなく、「安全運航」は航空会社の経営基盤と社会的責務です。私も技術畑を歩んできた者として、安全について、一切の妥協は許されない、安全は終わりなく追求しつづけるものである、そういう信念は、私の中に深く刻まれています。この「安全」とともに、航空会社の基本品質である「定時性」と「サービス」の更なる向上に力を注ぎ、そしてこれらを強固なものにし、お客さまが大きな価値を見出していただける航空会社になることをお約束いたします。
会長も先ほど申し上げましたが、社風の変革も早急に取り組むべき課題です。現在、JALグループの社員たちはこの厳しい状況の中でも士気が高く保ち、安全運航と定時性において、世界最高レベルのフライトをご提供し続けております。社員一人一人が「やりがい・はたらきがい」を感じ、そして輝きを放つ、そのような会社にすることが、お客さまに安心、安全、そして心地よさを感じて頂ける、こういうことにつながると確信しております。
「自ら変化していく」ための新たな一歩を踏み出します。
最後になりますが、航空会社として、皆さまのお役に立ち続けていくこと、これこそが、皆さまのご支援にお応えすることだという風に考えています。
この目標に向かって社員一丸となって走って行きます。今後も、JALをご利用いただけますよう是非よろしくお願いいたします。私からのご挨拶は以上とさせていただきます。
ありがとうございました。