JAPAN AIRLINES

定例記者会見

3月17日、定例記者会見を実施いたしました。
会見での会長・社長のメッセージを掲載させていただきます。

日本航空 会長 
稲盛 和夫

 株式会社企業再生支援機構さまによる支援決定から約2ヵ月が経ちました。お陰さまで私が会長に就任してから1ヶ月半程経っておりますが、JALグループの1日1,100便はしっかりと世界中の空で運航を続けることができております。これも政府、金融機関など関係の皆さまによるご支援と、お客さま、報道機関の皆さま、そして広く社会の皆さまのご理解の賜物と感じており、改めて御礼申し上げます。ありがとうございます。

 また、2月20日、当社は上場廃止となりました。今までJALを支えてくださいました株主の方々、金融機関など関係の皆さまそして広く社会の皆さまには多大なご迷惑をおかけすることとなり、心からお詫び申し上げます。今までご支援いただいていたにも関わらず、このような結果になりましたことに対して、今後は、二度とこのようなことが起こらないよう我々社員一同、しっかりと頑張って再建に努めてまいりたいと思っております。

 私が日本航空会長に就任してから1ヵ月半が経過しました。これまでの間に、会社の全体像を把握しようと努めております。特に会社の組織、組織が持っている機能を掴もうと思ってやってきております。また、空港などの現場を回り、役員や若手の社員の声も聞くなど、JALグループの実態の把握に努めてきました。同時に多くのお客さまのところに、今後JALをご利用いただけますようお願いと就任挨拶を兼ねてまわっております。

 JALの全体像を掴む努力をしておりますが、正直申しましてJALの組織そのものが、責任体制が明確になっていないということ、それと同時に起業家精神に溢れた人、つまりJALをもっと良い会社にしようという熱い精神をもっている社員が少ないということに気が付いています。色々な局面で、起業家精神に溢れた人、ちょっと表現が雑ですがガッツがある人が出てくるように思って、一生懸命促がしているところでございます。私の手伝いをしてくれる人が現れてくれることを期待しています。

 先ずなんと言っても経費を削減しなければならないと思っております。現在JALは毎日赤字を出しており、出血をしています。そのような状況で1日でも早く出血を止めなければいけないと思っています。あらゆる意味で経費の削減につとめておりますが、その中でも調達グループを再編成しました。日本航空は沢山の物を年間、外部から買っております。その中で少しでも良いものを、少しでも安く買い利益が出るようにしていきたいと思います。新しく購買室というのが出来、そこに若手も結集して、張り切って少しでも安く良いものを調達しようという意欲がでております。その意味では経費削減の効果が出るのではないかと思っております。

 先日、人件費の削減と特別早期退職を社員には提示してご協力をお願いしました。なるべく人員削減は避けたいと思っておりますが、しかし現在膨れ上がった人員、そして大きな赤字を出している現状では避けては通れない問題だと思って、皆さんにも大変悲しい現状ではありますが、ご協力をお願いしている状態でございます。

 アライアンスについてはこれまで当社は、アメリカン航空やデルタ航空と個別に交渉を進めてまいりましたが、私が着任してからも社内で若い人も入って議論してきました。その中で、会社更生法を適用してなんとしても早急に再建しなければならないという状況で、デルタに変えた場合色々なリスクがあるということが検討した結果出てきました。同時に、大変費用がかかるという問題も出てまいりました。社内で議論を続けた結果、従来のアメリカンとのアライアンスのままでやっていこうという結論に達しました。今後はアメリカン航空との更なる提携強化を行ない、アライアンスの効果を上げていきたいと思います。アメリカン航空からも多くの支援、お手伝いをしていこうという申し出も得ており、そのようなありがたい申し入れを今後は、JALとしても組織を作って勉強してまいりたいと思っております。

 現在、全体像を掴もうとしていると同時に、どうすればJALが黒字化できるかという点について検討いたしております。起業家精神に満ちた人が大変少ないので、そのような人を育成すると同時に、採算意識、損益意識を持った人達をもっと作っていきたいと、ちょっと言葉が下品かもしれませんが、商売人という感覚を持った人があまりにも少ない。つまり大学の経営などで学ぶことは良く理解しておりますが、正直言って我々は商売をやっておりますので、商売人的な感覚、つまり損益をベースに考えていくことが少ないということに大変残念に思っております。現場をまわっておりますと、若い社員が指摘するほどでございました。私は、企業というのは先ずなによりも損益がベースでなければならないと思っておりますので、それを今後盛り込んでいきたいと思っています。つまり、今までの日本航空が持っていた歴史と伝統の中で培ってきました企業文化を大きく変えていかなければならない、大変な作業だと思いました。私は及ばずながら、今まで経験してきました50年間にわたる企業経営の経験の中から、良いものをJALに移植してJALが甦っていくように頑張っていきたいと、このように思っております。

 今後とも厳しい状況は続きますが、皆さま方の温かいご支援をお願いしたいと思っております。

日本航空 社長
大西 賢

 社長の大西です。会長と同様、私も社長に就任してから1ヵ月半が経ちました。新役員体制も整い、会長、管財人のご指導の下で一枚岩となって、全力で再生に取り組んでいるところです。

 2月1日の記者会見で、私は「過去と決別する」と申し上げました。過去と決別して新しいJALを作る、そして社会のお役にたつ、お客さまに選ばれる会社になることが支援いただいた皆さまへの感謝につながり、また、ご迷惑をおかけした金融機関や株主さま、広く社会の皆さまへのお詫びにつながるものと考えています。

 このため、現在あらゆる方策を検討し、可能なものから随時実行に移しているところでございます。

 時系列で申し上げますと、会長からお話がありましたとおり、2月9日にアメリカン航空との提携強化を決定し、その週末となる2月13日には日米間の独禁法適用免除の申請を行いました。

 なお提携強化に先立ち、「同じく厳しい環境に置かれた他社がどのように工夫しながらこの厳しい環境を生き延びようとしているのか」について、襟を正して教えを請うべきだと感じ、現在、経営企画、調達、整備など部長クラスを筆頭に計11チームを、それぞれ現地に派遣しだしたところです。ジョイントビジネスについては、法律の規制によりアメリカン航空とは独禁法適用免除の認可までの間は、具体的な交渉可能な範囲は限定されますが、それを待つことなく、一刻も早く「ワンワールドに残る選択をしたこと」の効果を見出したいと考えています。

 また、人件費施策につきましては、2月17日に来年度の月例賃金を一般職については5%減額、管理職についてはこれを若干上回る額で組合に提示しています。この他に賞与・定期昇給・昇格なし、また運航乗務員の乗務手当保障時間を50時間に見直す検討にも入りました。グループ会社に関しても、月例賃金や賞与の抑制が行われます。これにより、グループ全体で年間300億円超、JALインターナショナル社員に限定していえば、合計で年間約180億円の削減となります。

 加えて、これまで実施してきた路線便数の見直し、及び今後加速する事業規模縮小に備えることに加え、間接部門の更なる効率化の実現を目的に、3月1日に部長級の特別早期退職を案内し、3月9日には次長・課長級に加え35歳以上の一般職に対しても対象を拡大して案内を開始しています。また昨日発表いたしましたとおり、35歳以上の運航乗務員についても案内を開始いたしました。

 これまでJALのために一緒に働いてきた仲間のことでもあり、私自身も形容しがたい程に心が痛みますが、最後のチャンスを国民の皆さまから頂戴した中で何としても再生しなければならない、このため避けては通れない道であることを社員に説明しているところです。必ず実現し、いかなるイベントリスクにも耐え得るスリムで筋肉質な体質へと変わってまいります。

 年金改定については、2月18日に申請し、お陰さまで本日3月17日午前中に厚生労働大臣から無事認可をいただけました。 なお、母体企業の日本航空インターナショナルが更正手続き下にあるという関係から、更正計画が裁判所に認可されることを条件として、施行することとなります。

 グループ調達部についてですが、今後の改革に向けて着手した段階です。グループ調達部に新設した総合購買室という部署に専任30名と兼務70名をおき、今後の調達業務における権限や業務分担の見直しに取り組むと共に、大型の案件に対しては早期に効果を出すことができるよう、洗い出しを進めているところです。

 JALグループはこれまでの中期計画やコスト構造改革の中で「調達業務」における集中購買の徹底等を進め、改革を進めてまいりました。しかし,経営として「まだまだ改革の余地がある」と判断し、決断した次第です。

 現時点では精査を行っている段階でコスト削減の効果見通しは申し上げられませんが、大きく切り込んで更生計画において効果をお見せすることができるよう、社員とともに改革を進めてまいります。

 さて、足元の需要環境については景気の停滞により引き続き厳しい状況にあるのが実態です。ただし、国際線の搭乗率は大幅な向上となっております。これは、機材のダウンサイジングと路線の運休、減便により、供給を前年対比で15〜20%程度を減らす一方で、需要の落ち込みは5〜10%程度に留まっていることによるものです。JAL国際線の旅客数の実績は、これからも供給の絞り込みにより前年実績を下回りますが、高い搭乗率を維持することにより、これまでと比較してより収益性の高い状態が継続することになります。今後も機材のダウンサイジングを進め、また路線を抜本的に見直すことで、再生に弾みをつけて行きたいと考えています。

 先般、日本貨物航空の親会社である日本郵船と当社貨物部門の共同事業としての枠組みに基づく統合協議を開始し、交渉を重ねてまいりましたが、残念ながら合意には至らず、3月2日を以って協議は終了しました。

 なお統合新会社設立協議は終了しましたが、従来から行っているコードシェア、地上ハンドリング受託など、今後も、提携・協力関係について両社で引き続き検討していきます。

 今後については、現在検討中の再生計画の中で詳細を検討しており、貨物専用機での事業が検討の俎上に乗りますが,JALグループで運送している国際貨物の半分以上が旅客便下部、いわゆるベリーで輸送されているものであり、貨物事業からの撤退は考えていません。早期に収益性を確保できる体制の構築を目指し、今後も検討を進めてまいります。

 最後になりますが、どこをとっても厳しい環境の中で、実現に移せるものは、更生計画の認可を待たずして即実行することにより、機動力を高め、変化に対応できる体質を目指してまいります。このことが私どもに与えられた任務であり、必ず達成します。

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