8月31日、記者会見を実施いたしました。
会見での管財人・会長・社長のメッセージを掲載させていただきます。
日本航空 法人管財人職務執行者
企業再生支援機構 再生支援委員会 委員長
瀬戸 英雄
日頃から、日本航空の再建にご理解いただき感謝申し上げます。
日本航空は、本年1月19日、企業再生支援機構の支援決定とともに、東京地方裁判所から会社更生手続開始決定を受け、機構の支援スキームに裁判所監督下での会社更生手続を併用することで再建が進められることになりました。
以後、企業再生支援機構は、法人管財人として、裁判所の指導の下、日本航空再生の舵取りを行ってきました。機構は管財人として強力な権限、包括的な財産管理処分権と業務執行権を持つことになりましたが、稲盛会長のお力添えを得て、この肥大化した組織に対し、大胆で抜本的な施策を実行することが可能になったと思います。また、裁判所の監督下で再建手続を進めることは、中立な立場で粛々と再生への施策を進める環境を提供してくれました。
更生計画案の概要をご説明します。
JALグループは、本年3月末時点における連結ベースで、9,592億円の債務超過に陥っていましたが、更生計画による債務の減免、機構による3,500億円の出資、平成23年3月末までの事業利益等の計上によって、再生1年目には、営業黒字化・債務超過を解消することを計画しています。その上で、平成25年3月末時点には1,800億円超の純資産を確保することを計画しています。
まず、事業計画のポイントとして
○ 非効率機材の早期退役、ダウンサイジング、不採算路線からの撤退
○ 固定費の削減、航空運送事業への集中
○ 大幅な人員削減
○ 羽田線を中心としたネットワーク、アライアンスの強化
○ 効率的・戦略的な組織、実行力ある経営の確立
○ いかなるイベントリスクの発生にも対応できる体制の構築
がありますが、以上の諸施策の実行は、安全運航の確保が大前提です。
次に、組織再編、権利変更および弁済計画のポイントについてご説明します。
更生3社の組織再編についてですが、JALIを存続会社として更生計画認可の翌日の12月1日に合併予定、また�潟Wャルウェイズおよび�潟Wャルリーブルも吸収合併します。さらに、株式消却、資本金・資本準備金を全部減少のうえ、機構が3,500億円を出資 平成23年4月1日、JALIは、「日本航空株式会社」と社名変更します。
更生債権等の弁済は、内部債権消滅、重複債権を一本化し、一律の弁済率とします。更生担保権は、7年間の分割弁済 処分価額連動弁済方式を適用します。一般更生債権は、87.5%免除、これも7年間分割弁済が原則であります。社債は、更生計画認可決定日から3か月以内に、一括弁済する予定です。
これらについては、裁判所の許可を得て繰上一括弁済を行うことができるとしております。
ところで、事業再生のプロセスは、その取り組みの初期段階から多面的かつダイナミックに業務改革を推進するものであります。事業計画として説明した部分の多くは、すでに計画立案の前提として実施済みのものも多く含まれています。組織再編・権利変更及び弁済計画が、まさにこの更生計画によって行うものであります。
今後の課題としては、大きく2点です。
1点目は、リファイナンスによる早期終結です。
更生計画では、担保権は財産評定によって評価を洗い直し、また一般更生債権は12.5%に権利変更の上、いずれも利息損害金の免除を受けて、7年間の分割弁済を原則としています。
しかしながら、平成23年3月を目処として、裁判所の許可を得て、リファイナンスを実施し、それを原資とする繰上げ一括弁済によって、会社更生手続を早期に終結させることを目指しています。これによって、利子負担は発生することになりますが、「更生会社」の看板を早期に外して、通常の株式会社とすることが、業務上望ましいからであります。
主要金融機関には、その方向で協力を求めています。更生計画に定められた内容の具現化やこの秋から始まる希望退職の状況、新しい路線・路便による収益状況、改革を推進する組織体制などを見てからの判断になろうと思っています。
次に、イベントリスクへの対応です。
航空事業は、イベントリスクに晒されやすい業種であります。イベントリスク兆候の発見に努め、緊急対策を機動的に発動できる体制を築き上げることが必要です。
また、万一の場合、管財人である機構は、更生手続後も、機構法の下で可能な範囲で、諸施策を実行します。また、資本に更なる厚みを持たせることは、経営に安定をもたらします。民間を含め、JALの将来に期待する出資者を幅広く増強することも検討しています。
次に、コンプライアンス調査報告について触れます。
先週26日、コンプライアンス調査委員会から調査結果の報告を受けました。その要旨は、本日配布の資料のとおりであり、これを日本航空のホームページでも開示します。
その内容の詳細を報告する時間はありませんが、同委員会は、更生会社において行われてきた経営に関し、経営判断あるいは企業統治に問題は存するものの、旧経営者に刑事上および民事上の法的責任は認め難いとの結論に達したとのことであります。管財人としては、この委員会の判断を尊重することとしたいと思っています。
日本航空の会社更生手続が開始した1月19日以降、我々は同社の再建のため、様々な施策を実行し、改革を推進してきました。その成果と債権者各位に対する最大弁済を織り込んだ更生計画案は、2週間のうちに、裁判所から各債権者にご送付されます。是非ともご賛同いただきたいと思います。
もとより、更生計画の成立は、再生への一時点でしかありません。ナショナルフラッグキャリアと呼ばれた伝統企業といえども、一旦失われた経済的信用を回復するのは、容易なことではありません。現在、JALグループ一丸となって、その存続を賭けた必死の努力を重ねているところです。更生計画を「不屈不撓の一心」をもって、誠実に、着実に、そして継続的にこの計画を実現していく強固な経営体制を構築し、日本を代表する企業として、信頼と誇りを取り戻したいと思っております。
引き続き、皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。
日本航空 社長
大西 賢
本日はお集まりいただきありがとうございます。今、瀬戸管財人統括よりご説明がありました通り、本日、更生計画案を提出いたしました。まず、1月19日の会社更生法申請後も事業を継続させて頂き、そして再生のチャンスを頂いていることに改めて感謝申し上げます。引き続き安全運航を堅持しながら、その上で、この計画を着実に実行しJALグループを確実に再生させることが私の使命と考えています。皆さまにはご迷惑をおかけしますが、必ず実行して参ります。今後ともご支援をいただきますようお願いします。
なお7月の経営概況について、簡単にご紹介します。国際旅客と貨物の好調、そして費用の順調な削減により、速報値ベースではございますが、7月のJALインターナショナル単体で営業利益は約175億円の黒字を見込んでおります。またグループ連結の営業利益は231億円程度と順調に推移しております。
引き続き安全を堅持しながら計画を着実に実行して参りますので、ご支援をよろしくお願い致します。
日本航空 会長
稲盛 和夫
本日はお暑いなか、お集まり頂きありがとうございます。先ほどから、それぞれお話がありましたので、私からは一言だけ申し上げたいと思います。
日本航空は株主様、各金融機関様はじめ多くの皆様に大変なご迷惑をお掛けしました。本日、更生計画案を提出致しましたが、私は本日が日本航空再建のスタートであると思っております。今後、我々は更生計画に盛り込んだ事業計画を確実に、それ以上の数字が出るように努力していかなくてはと思っております。
2月に会長に就任して以来、私は日本航空の役員はもちろんのこと、全社員に「何としても再生しなければならない」という強い意識に変わってもらうために意識改革に取り組んでまいりました。役員ならびに社員が大変な努力をして、大きく変化を遂げてきたと思っております。その意識の変化が、社長の大西から報告させて頂いた7月の業績にも大きく反映しているのではないかと思います。
更生計画が「絵に描いた餅」にならないよう必死でこの計画を推進してまいろうと思っております。今後とも一生懸命頑張ってまいります。どうぞご支援賜りたくお願い申し上げます。