アメリカ北東部に位置するマサチューセッツ州。州都・ボストンはアメリカで最も古い街のひとつだ。レンガ造りの古い建築物や石畳の細い路地、由緒ある教会など、ヨーロッパを彷彿とさせる街並みと近代的な高層ビルが混在。活発な現代都市と静かで落ち着きある古都が見事に共存している。
アメリカ独立運動発祥の地でもあり、多くの歴史的な出来事の舞台となってきた。建国にひた走った、名だたる先人たちゆかりの史跡が数多く点在し、四季が彩る景色の中でその歴史を辿ることができる。そう、ここボストンはアメリカの始まりの地だ。
最もボストンらしさを感じさせる地区といえば、ダウンタウンの西側に隣接するビーコンヒルであろう。18〜19世紀に建てられた赤いレンガ造りの建物が並ぶ景観は、優雅な気品に満ち、上質で洗練された雰囲気が包む。まるで華麗な中世ヨーロッパの世界にタイムスリップでもしたかのようだ。夕暮れ時にともるガス灯、狭く曲がりくねった石畳の小道、しっとりと美しい赤レンガの家々。閑静な住宅街は観光地としても人気を集める。
良質なブルゴーニュの赤ワイン
鮮やかなタイル屋根のオスピス・ド・ボーヌ
しかし。かつて、この地から奴隷制度廃止の声が上がり、黒人奴隷を保護する組織が作られたことを心に想う。いつの時代も、改革の最前線を歩んだ誇り高き歴史を想う。自由の国アメリカを求め、揺るぎない推進力として役割を果たしてきた赤いレンガの街並み。伝統を継ぎ、新しさを求め、歴史を重ねた。そして今なお変わらず、静寂の中に佇みながら人々を魅了し続けている。
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