ポストの色といえば、赤。日本ではごく当たり前のイメージも、世界の国々を見渡すとそれは速やかに覆される。実にさまざまな色が使われているのだ。アメリカやロシアでは青、中国やアイルランドは緑、フランスやドイツ、オーストリア、スイスなどのヨーロッパ諸国では黄色が主流、という具合に、各国のポストのカラーバリエーションは豊かで楽しい。
赤いポストは、イギリスで生まれたとされている。近代郵便制度発祥の地であるイギリス。ポストが登場したのは1852年のこと。制度の発達とともにイギリス全土にポストが広まっていった。しかし、初めから色が赤と決められていたのではないらしく、当初は緑のポストもあったそう。現在では、製造された時代や地方で形やデザインは数多くあれど、色はほぼすべて美しい赤に塗られている。
イギリスや日本以外にもポストが赤い国はもちろんある。かつてイギリスの植民地であった国々がその影響を受けていることが多く、または目立つからという理由で、イタリアやポルトガル、オーストラリア、南アフリカ、アジアではインド、韓国、タイなどで赤いポストが使われている。ちなみに日本では、イギリスにならった郵便制度を導入し、ポストの色も赤とされた、ということらしい。
カリムノス島の大きな古代オリーブの木
ギリシャの伝統的なパン“パクシマディ”
ロンドンの雑踏で、緑に染まる田園地帯で、くっきりと美しく際立つ赤。青空を背景に光が降り注ぐ夏の日はもちろん、小雨に煙る春の午後にも、霧が立ち込める冬の夕暮れにも、イギリスらしい情景のなかで、ポストの赤はハッとするほど美しく目に留まる。それはまるで映画や小説のワンシーンのように、物語を感じさせる趣を伴った美しさだ。目を向ければ、思わずそっと心を寄せたくなる、そんな情緒的な美しさが不思議と感じられるのだ。
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