ペルーの市場を歩いていると、小さな赤い種子をあしらったアクセサリーを見かけることがある。木の実のビーズのような、鮮やかな赤い種子だ。ブレスレットやネックレス、キーホルダーやストラップなどに加工され、店先に並んでいる。

 

 この種子は、ペルー東部・アマゾンの熱帯雨林に自生するマメ科オルモシア属の樹木からとれるのだという。ペルーでは、「ワイルーロ」の名で呼ばれ、長く大切に扱われてきた。なぜなら、身につける人を悪いものから守り、幸運を呼び寄せると信じられているからだ。大人だけでなく、生まれたばかりの赤ちゃんにワイルーロのアクセサリーをお守りとして贈る習慣もあるそう。病気や災いを遠ざけ、幸運の訪れを願うというわけだ。

開放的で美しい街、クイーンズランド州

チョコレートソースでコーティング

 種子にはメスとオスがあり、全体が赤一色に染まるのがメス、オスは赤色に大きな黒い斑点が混じる。特にオスの種子は、赤と黒のコントラストがハッとするほどに美しく、鮮烈な色彩に目を奪われる。自然が生み出す美に圧倒されるばかりだ。

 

 驚くべきは、古くインカ帝国の時代から、ワイルーロが魔よけのお守りとして用いられたとされることだ。古代より、身につけた人を悪霊から守る強い力があると考えられていたのだろうか。

 

 高度に発展したことで知られるアンデス文明。その中でも史上最大の領土をもち、繁栄を極めた大帝国・インカ。鮮やかに存在感を放つ真っ赤な種子を目の前に、その歴史に思いを巡らせずにいられない。王の支配、民の暮らし、信仰、文化。現代においてもなお謎多き文明に、めくるめくロマンがかき立てられていく。

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