秋の味覚としてドイツで古くから愛されている料理がある。「玉ねぎケーキ」といわれるツヴィーベルクーヘンだ。塩味を効かせたキッシュのような料理で、驚くほどたっぷりの玉ねぎを使う。これがおいしさのヒミツ。じっくり時間をかけて玉ねぎを炒め、甘みとうまみを引き出していく。そこにベーコンやサワークリームを加え、パン生地の上に流し込む。オーブンでサックリと香ばしく焼き上げたら完成。玉ねぎのおいしさをギュッと凝縮した、ドイツの伝統料理だ。
気候が厳しく、肥沃な土地が少ないドイツ。冬の食糧難に備え、玉ねぎやジャガイモなど、保存に向く食材が重宝されてきた歴史がある。古くからの伝統料理にも多く使われる玉ねぎは、ドイツの人々にとって身近で大切な食材なのだ。
このツヴィーベルクーヘンに欠かせない飲み物がある。同じく秋の味覚として親しまれるフェーダーバイサーだ。発酵途中の白ワインのことで、濃厚な甘みとシュワシュワとした微炭酸が特徴。塩っ気のあるツヴィーベルクーヘンと相性抜群で、一緒にいただくのがお決まり。晩夏から秋にかけて、各地で行われる収穫祭や市場の屋台でもツヴィーベルクーヘンやフェーダーバイサーは大人気。まさに秋の風物詩というわけだ。
発酵途中の白ワイン・フェーダーバイサー
花と一緒に編み上げられた玉ねぎ飾り
ドイツ中東部に位置する古都、ワイマールでも毎年10月に収穫祭が行われている。その名も「玉ねぎ祭り」。起源は1653年にまで遡るというから、その歴史は古い。もともとは、秋の玉ねぎの収穫を祝い、来たるべき冬に備えて、玉ねぎなどの野菜を入手する目的があったそう。それが今では、野菜だけでなく、調味料、洋服や帽子、民芸品、飲食店など、何百もの出店が立ち並び、会場のステージでは演奏やパフォーマンスが行われるなど、ワイマールを代表する大きなイベントに発展した。
賑わうのは、やはり玉ねぎにちなんだお店。花と一緒に編み上げられた美しい玉ねぎ飾りに見とれ、ツヴィーベルクーヘンやオニオンスープでお腹を満たす。長く厳しい冬の訪れを前に、秋のドイツでは玉ねぎが人々をたっぷり楽しませてくれる。
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