ヨーロッパのほぼ中央に位置するハンガリー。面積は日本の4分の1ほど、周囲7カ国と隣りあう内陸国だ。ドナウ川が東西を二分するように流れ、広がる大平原となだらかな丘陵が国土の大半を占める。
ハンガリーは歴史のなかで個性豊かな食文化を育んできた国。代表的な食材にパプリカがある。パプリカは、ハンガリーで品種改良された歴史があり、今でも数多くの品種が生産され、料理に欠かせないものとなっている。また、糖度の高い貴腐ブドウを使った高級甘口ワイン「貴腐ワイン」の名産地としても有名だ。
一方、ストリートフードの名物が「ランゴシュ」だ。醗酵させた生地をピザのように平たく伸ばし、油で揚げ、好きなトッピングをのせて食べる。外側はサクッとクリスピー、内側はふっくらもちもち。サワークリームとたっぷりのチーズが人気のトッピングだ。顔より大きいかと思うボリューム感も特徴。
町のスタンドや屋台で年中食べられるものの、夏の暑い日にこそ食べたいという人も多くいるとか。たとえばお祭りの出店で、揚げたてアツアツのランゴシュを、汗をかきながらパクリ! 夏の食欲を大いに刺激する美味しさというわけだ。
揚げたてにかぶりつくのがおすすめ
聖イシュトバーンの日に打ち上がる花火
夏のお祭りといえば、8月20日はハンガリーの建国記念日。初代国王の名から「聖イシュトバーンの日」とも呼ばれる国民の祝日で、首都ブダペストでも盛大に祝われる。世界一美しいと称される国会議事堂の前で式典が執り行われ、空軍の飛行ショーや立ち並ぶ出店が人々を楽しませる。クライマックスを彩るのは、ドナウ川上空に打ち上がる花火の数々。きらめく夜景とともに、無数の花火が華やかに、壮大に祝日を締めくくる。
夏の終わり。ランゴシュを片手に、美しい夜空のショーに見惚れて過ごすひととき。それは素敵な風物詩に違いない。
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