石川県七尾市には能登半島最大の海の温泉地があり、周辺には温泉旅館が軒を並べる。

そのなかでひときわ存在感がある20階建ての宿が「和倉温泉 加賀屋」。100年以上続く伝統のおもてなしが好評で、今年「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で39回目となる総合第1位に選出された老舗旅館だ。輪島塗や大樋（おおひ）焼など、石川の伝統工芸品を館内に散りばめているため、建物全体が美術館のような造りになっている。湯番頭による1日2回の「美術館ツアー」も、宿泊者から人気だ。丁寧に設えられた絵画や生花など、随所に日本の温かさを感じる純和風の能登渚亭は、全室が吹き抜けを囲む角部屋となっており、落ち着いた時間を過ごすことができる。細部まで行き届いたおもてなしと石川県の芸術に触れ、ぜいたくな非日常を味わってみてはいかがだろうか。

温泉の源泉数・湧出量ともに日本一を誇る大分県の、JR由布院駅から徒歩約15分。

由布岳の麓にあるのが、1953（昭和28）年に開業した「由布院 玉の湯」。廊下や各客室のテラスなど随所に椅子が置かれ、落ち着いた時間の流れのなかで由布院の豊かな自然に触れることができるのが特徴だ。特別な時間をのんびりと過ごしてほしいという思いから、チェックインは14時、チェックアウトが12時と長く滞在できるように設定してあるのも嬉しい。提供時間とメニューが選べる料理は、近隣で採れるクレソンと地鶏やすっぽんなどを使った鍋料理や、辰巳芳子先生考案の「いのちのスープ」を堪能できる朝食が人気。疲労回復効果のあるメニューが揃い、身体の内側から日頃の疲れを癒やすことができる。四季折々で違う表情が楽しめ、何度も訪れたくなるこの宿には、穏やかな時間が流れている。